例えば葉っぱの葉脈の形や海の波紋の形は、人のために美しいのではない。
しかし、それらには人を惹きつける強い力がある。

私はそのような、人が見過ごしている自然の強さをつくり出せないだろうかと考える。
自然物には描く事では表現することができない要素が含まれている。
そのために私は水の流れや蒸発などを一つの筆とし、
制御しきれない変化に向き合いながら流動する姿をとどめたいと考えている。
対象を写し出すというより、画面上での出来事の定着であり、
そこに現れたものとは自然物ではないが完全な人工物でもない。

水と私の行為が静止した時、そこに一つのものが現れる。

私たちは自然に対して圧倒的な存在感や視覚的な面白さ、
そして自らの鼓動とリンクするようなリズムを求めているのではないだろうか。

そして、現れたものを見たときにいつか見た葉脈を見たときの
感動のようなものを感じることができるものでありたい。

2009.5 川北ゆう